2020年2月21日金曜日

自己決定力がある子どもは幸せになる! “自分で考え、決められる子” はどう育てるのか

国連の「世界幸福度報告書」における日本の幸福度は、2017年で51位、2018年は54位、2019年にはさらに4つ順位を下げ58位になってしまった。
 
世界から眺める日本はとても豊かな国だが、所得水準と幸福度が必ずしも相関しないことは、1970年前後から指摘されている。
 
そんな背景を踏まえて行なわれたある調査研究では、日本人の幸せに「自己決定」が重要であると示された。
 
今回は、子どもが幸せになるための「自己決定力」について探ることにする。
 
 
 
『所得、学歴よりも「自己決定」が幸福感に強い影響』
 
神戸大学社会システムイノベーションセンターの西村和雄特命教授と、同志社大学経済学研究科の八木匡教授は、日本国内の2万人に対するアンケート調査をもとに、次の5つの項目と、幸福感とのかかわり合いを分析したとのこと。
 
所得
学歴
自己決定
健康
人間関係
 
ちなみに、3番目にある「自己決定」の評価は、自分の意思で進学や就職(中学→高校への進学、高校→大学への進学、初めての就職)を決めたか否かによって行われた。
 
その結果、健康、人間関係に次いで、「自己決定」が幸福感に強い影響を与えていると明らかになった。
 
つまり、所得や学歴が高いより、「自己決定度」が高いほうが、幸福感が高くなるということ。
 
これを受け、神戸大学社会システムイノベーションセンターは次の見解を述べている。
 
自己決定によって進路を決定した者は、自らの判断で努力することで目的を達成する可能性が高くなり、また、成果に対しても責任と誇りを持ちやすくなることから、達成感や自尊心により幸福感が高まることにつながっていると考えられる。
 
(引用元:国立大学法人 神戸大学 (Kobe University)|所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査)※太字は編集部が施した
 
国連の世界幸福度報告書では、日本は「人生の選択の自由度が低い」国であると述べられている。
 
そうしたことからも同センターは、今回の分析結果が注目に値すると述べている。
 
この調査研究からわかるのは、自分の子どもを将来幸せにするためには、ただ勉強して学力をつけさせればいいというわけではなく、「自己決定力」も育んであげるべきだということ。
 
では、「自己決定力」とはどういうものか?
 
 
 
『児童における「自己決定力」とは?』
 
子どもの判断や決断は、ほんの些細なことから始まる。
 
どのおもちゃで遊ぶか、何を買ってもらうか、どの宿題から始めるか……。
 
この些細な決断の繰り返しが、とても重要である。
 
なぜならば、「ほんの些細なことを考える・判断する・決める」ことができなければ、とうてい進路や就職先といった「大きなことを考える・判断する・決める」ことなどできないから。
 
当然「自分の考え」も定まらない。
 
岩手県立総合教育センターによる「小学校キャリア教育の推進に関する研究(2005年)」では、小学校からのキャリア教育(=自らの生き方を考える力を育む教育)で目指す児童の理想像のなかに「自己の考えを確立できる人間」を挙げている。
 
その理想像に近づくためには、「人生や進路を、主体的に選択できる力を培うこと」が必要。
 
進路を自分で決められるということと、自分なりの考えをしっかり深められるということは、表裏一体だということ。
 
玉川大学の大豆生田啓友教授いわく、子どもの「自分で決める力」を育てるためには、「子ども自身が自分で考えて、自分で物事を決める経験」を重ねることが必要。
 
つまり、幼いころから小さな自己決定を重ねていけば、自分の考えを打ち立てられるようにもなるし、ゆくゆくは大きな自己決定も可能になる。
 
もしも、その経験が不足したまま成長してしまったら、自分で考えられない、判断もできない、決めることもできない「困った人」になってしまうかもしれない。
 
そんな人では、自分の進路について満足の行く決断を下すことなど、きっとできないであろう。
 
 
 
『「自己決定力のある子ども」を育てるためにすべきこと』
 
では、我が子を「自分で考え自分で決められる子ども」にするために、親はどんなことをするべきか。
 
専門家や有識者の言葉を参考にしながら、3つ紹介する。
 
 
 
1. 小さなことを自分で決めさせる
 
子どもに「自己決定する経験」を積ませるために、「小さな決断の機会」をたくさん用意してあげる。
 
就学前~小学4年生の子どもを持つ保護者に向けた、茨城県教育委員会の『子育てアドバイスブック クローバー』によれば、「服を選ぶ」「おもちゃを選ぶ」などの場面は小さな決断に最適だとのこと。
 
その際、子どもの決断が親の考えと多少違っていても、口出しせず見守るようにするといい。
 
ちなみに、日本小児学会会長で医学博士の高橋孝雄氏によると、子どもはだいたい2歳になるころには、二者択一できるようになっているとのこと。
 
なので、小さな子どもが着る服で迷っている様子なら、「どれを着る?」ではなく「青のお洋服と黄色のお洋服、どっちがいい?」と聞くようにすることで、決断力が養われる。
 
子どもがもう少し大きければ、親が判断に役立つ条件を子どもに伝えてあげるといい。
 
家庭教育の専門家・田宮由美氏いわく、なかなか子どもが決断できない場合、頭の中の決断材料が整理しきれていない可能性があるとのこと。
 
たとえば、「半袖のシャツと長袖のシャツ、どっちを着る?」だけではなく、「今日は少し寒くなるみたいよ」と条件を加えると、子どもは「寒くなるなら長袖にする」と、自分なりに条件をクリアして決断することができる。
 
また、前出の大豆生田教授のアドバイスは、ちょっとした応用編になるかもしれない。
 
単に「どっちの服を選ぶか」ではなく、たとえば、「その日の服のコーディネートを考える」「その日の気温を自分で考慮し服を選ぶ」といったことにチャレンジさせる。
 
「このスカートに何を合わせる?」「今日の温度はどうかなぁ?」などと言葉をかけ、きっかけを与えてあげる。
 
こうした経験を重ねて「自己決定力」が育つと、同時に自信や自己肯定感も育つ。
 
 
 
2. 宿題に手出し口出ししない
 
子どもに「自己決定力」をつけさせたければ、宿題を手伝ってあげるのはNG。
 
元新聞記者で臨床心理士の西脇喜恵子氏は、たとえば夏休みの宿題で子どもが困らないようにと親が先回りしてやってあげるなどしていると、子どもが自分で考えたり感じたりする力を弱めてしまう、と注意を促している。
 
また、社会学者キース・ロビンソン氏とエンジェル・ハリス氏らによれば、小学生時代に親がつきっきりで宿題を手伝っているほど、年齢が上がるにつれ学業成績が低下してしまうとのこと。
 
その理由は、「親が手伝ってくれることに慣れてしまい、自分で考えたり工夫したりする力が培われないため」。
 
子どもを案じるあまりあれこれ手出し口出ししていたら、かえってよくない結果を招いてしまう。
 
だからといって、子どもの宿題を全くもって放置していいわけではないと、子育ち研究家の長岡真意子氏はいう。
 
いつもギリギリまで宿題をしない子どもであれば、常に締め切りの段階で徹夜をするなど、勉強内容が身につかない行動を繰り返しかねないからである。
 
長岡さんいわく、大切なのは宿題を手伝うことではなく、足場づくりをすること。
 
たとえば。
 
【宿題をする理由を伝える】
→「なーんだ、そうだったのか」「なるほど」「あ、これ知ってる」が増えて楽しいよ!
 
【宿題の計画を一緒に立てる】
→おやつタイムを加味した、宿題スケジュールを一緒に考えてみる
 
【宿題をする環境を整える】
→気分を尊重し「今日はどこでやる? このテーブル? それともあっちの机にする?」と聞いてみる
 
【宿題の答えは教えず思考を促す】
→たとえば「これをママに説明してみてくれる?」などと、子どもが自ら答えにたどり着くのを助ける
 
こうした宿題への取り組み方が、「自己決定力」を養うことにつながるのである。
 
 
 
3. 子どもの意見に「どうして?」と尋ねる
 
2019年3月まで筑波大学附属小学校の副校長を務め、卓越した算数指導や教員指導の実績からカリスマ教師とも呼ばれる田中博史氏は、子どもならではの口癖に「どうして?」というものがあるけれど、じつは大人が子どもに向かって発するべき言葉でもあると述べている。
 
いくら子どもに考えさせたいと思っても、「しっかり考えなさい」といくら子どもにいい聞かせたところで、実際に子どもが考えているかどうかはわからない。
 
だが、子どもの発言に親が「どうして?」と声をかけることで、より深く考えさせることができるとのこと。
 
たとえばAとBのぬいぐるみがあり、子どもに「どっちが好き?」と聞けば、子どもはAかBかを選ぶはず。
 
あるいはどちらも選ばないかもしれない。
 
いずれにせよ、その時点で子どもはまだ深く考えていないであろう。
 
そこで親が「どうして?(それを選んだの?)」と聞いてみれば、子どもは「なぜその選択をしたのか」「なぜ選ばなかったのか」と考える機会を得る。
 
たとえ「好きだから」「嫌いだから」といった単調な答えが返ってきたとしても、「そっかぁ、じゃあ、どんなところが好き(嫌い)?」と聞いてみよう。
 
こうした「どうして?」の繰り返しが、子どもの「自分で考え、決める力」を伸ばす。
 
三重進学ゼミではこう言った『どうして?』を常に生徒へ行っている。
 
どうして『元気よくあいさつ』するの?
 
どうして『丁寧な言葉』で話をしないといけないの?
 
どうして『忘れ物』をしたらいけないの?
 
どうして『正しい姿勢』で勉強をしないといけないの?
 
どうして『その答え』になったの?
 
どうして『字をキレイ』に書かなければいけないの?
 
どうして『消しゴムのカス』をキレイに片付けなければいけないの?
 
どうして先生にプリントや宿題を見てもらうとき、『渡す向き』に注意しないといけないの?
 
どうしてプリントなどを『クチャクチャにせずキレイ』に保たなければいけないの?
 
どうしてか分からずに、ただ何となく生活しているようでは必ず将来これらで困る生徒が出てくる。
 
これらは、社会に出たとき当たり前かのようにしなければいけないことである。
 
当たり前ができなければ、日常から上司や得意先の会社などに『こんなこともできないのか』または『こんなことから教えないといけないのか』と嫌な顔をされることだろう。
 
そうなれば、言われている本人の『幸福度』は確実に下がるであろう。
 
 
 
今回は「自己決定力」が高ければ幸福感も高まることを背景に、「自己決定力」を育むために親ができることなどを紹介した。
 
イエール大学で心理学を教えるローリー・サントス教授も、幸福感は仕事のパフォーマンスや寿命などにも影響すると言っている。
 
子どもが幸せになれるよう、小さな決断の機会をたくさん与え、時には「どうして?」と言葉をかけながら、あとはあれこれ手出し口出しせず、見守ってあげるようにしよう。

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