2020年8月1日土曜日

“言語化能力の高い人” が必ずやっている「インプットとアウトプット」


ここ最近、注目を集めている「言語化」というキーワード。ヤフー株式会社のマーケティング本部長である井上大輔氏は、「言語化」について次のように述べています。

①事象・具象(世の中のできごと)をよく観察すること。そこから、②複数の事象の共通点を見つけ出し、③話を伝える相手のことをよく理解して、④相手にわかりやすく表現する。
つまり「言語化」とは、単に頭で考えていることをそのまま言葉にするだけではなく、物事を自分なりに噛み砕いて相手に伝えるまでの一連の流れを指しているのです。
とは言え、「話すのが苦手だし、言語化って難しそう」と感じる人も少なくないはず。自分の思考を、言葉を用いてわかりやすく表現するには、練習が必要です。
そこで今回は、自分の思考を言語化することで得られるメリットと、その練習方法について解説します。

「言語化」によって得られる3つのメリット

【メリット1】アイデアの一貫性を保つことができる

人間の記憶は、非常に忘れられやすいものです。
たとえば、何かの案を考えたり、作文などを書いたりするとき。
どういったテーマにしたいか、どのように話を進めていこうかと考えているうち、最初に考えていたテーマからどんどんかけ離れてしまっていた、ということが意外と多くあるのではないでしょうか。
頭の中のアイデアを出しきったあとに、もしそれらが書き残されていないと、自分の記憶にはなかなか残りません。
しかし、言葉として見える形で残しておくことで、思考のスタートからゴールまでを一貫してたどることができます
メンタリストとして活躍するDaiGo氏によれば、物事を何度も反復すると、「思い出そう」という動作が脳内で作業化され、記憶が長期的なものになるそう。
言葉として残された情報は、何度だって確認することができますよね。
言語化された思考の道筋を何度もたどれば、何を考えていたかが鮮明になり、どうしてその結論に至ったかまで覚えていられるのです。

【メリット2】自分の思考を客観視できる

思考や感情を客観的に把握することは、とても重要な視点です。
普段見落としがちですが、自分の思考や感情について、私たちは主観的に理解しているものですよね。
自分の思考や感情を、言語化を通じて視覚化する方法のひとつに、「筆記開示」があります。
たとえば、先生や親に叱られてイライラしてしまったとき。
叱られた直後は感じたままイライラしていても、ひと呼吸おいて「なぜ私は先生や親から同じことで怒られてイライラしているのか」を紙に書き出し、そしてその理由についても書いてみます。
そうすれば、「自分はこんなことをやっていたのか。または考えていたのか」と、感情を客観的に捉えることができるようになるというわけです。
筆記開示の心理的療法については、多くの研究がされています。
ペンシルバニア州立大学で生物行動学の教授をしているジョシュア・スミス氏らの研究チームによれば、トラウマ体験の筆記を通して、その体験を肯定的に見ることができるようになるという結果が証明されたのだそう。
この方法は、自分自身のメンタルを維持する目的でも用いることが可能です。
たとえば、「つらい」「悲しい」といった感情を抱えているとき、「〇〇がつらい」「〇〇だから悲しい」などと言葉に起こして視覚化することで、「自分が真に何を考え感じているのか」を冷静に捉えることができるようになります
言語化能力を身につけることは、自分のアイデアをより洗練させるだけでなく、ときには客観的な姿勢で精神を安定させる良薬にもなり得るのです。

【メリット3】要約力が身につく

思考や感情の言語化を普段から行なうようにすると、要約力も身についてきます。
要約力とはつまり、「ひとことで表現できる力」です。
自分の思考や感情を自分自身が理解していなければ、相手へ正確に伝えることはできませんよね。
頭の中にどれだけ良いアイデアが浮かんでいたとしても、そのアイデアをきちんと整理して表現できないと、相手にはうまく伝わらないのです。
言語化能力が高まると、不必要な要素をどんどん排除して、アイデアの純度を高めていくことができます
本当に伝えたいこととは関連性が薄い内容を書いていたり、同じ内容を別の表現で書いていただけだったりすることに気づくからです。
相手へ伝えたい内容を最低限に絞ることで、ある程度の要約にはなりますが、その内容をできるだけ簡単な言葉でまとめ直してみると、自分の思考や感情が相手へさらに伝わりやすくなるに違いありません。
さまざまなメディアで国語力やコミュニケーションについて説いている明治大学文学部教授の齋藤孝氏は、要約力の低さが私たちへもたらす結果について、自身の著書『子どもに伝えたい<三つの力>』内で次のように述べています。
対話力やコミュニケーション能力の根本をなすのは、要約力である。対話が不毛になる原因のもっとも大きなものは、要約力の低さであると私は考えている。
(引用元:齋藤孝 (2001),『子どもに伝えたい<三つの力>』, NHKブックス.)
自分の思考や感情すべてをそのまま相手に伝えると、結局何が言いたいのか相手はわからなくなってしまいますよね。
その状況を改善するには、言語化能力を駆使した要約がとても役立つのです。
言語化能力を高める方法01
「言語化」ができるようになる、効果的な方法とは?
言語化に普段から慣れていない人の特徴として、「語彙力の不足」が挙げられます。
たとえば、インターネットで自分の調べたいものを検索するとき、検索エンジンにヒットするような単語がうまく思い浮かばない……。
これは、自分の頭の中に、それに相当する単語がストックされていないから起こる現象です。
第二言語習得の分野では、情報のインプットが個人の表現力・文章力に影響を及ぼすことがよく知られていますが、南カリフォルニア大学の言語学名誉教授Stephen Krashen氏は、充分なインプットが行なわれれば、自然とアウトプットは行なわれるという「ナチュラル・アプローチ」理論を1983年に提唱しました。
単語のインプットを増やすことにより、抽象的な自分の「思考」「感情」を、具体的な「言葉」で説明できるようになるのです。
さらに、アウトプットの際も、以下のようなことに注意してみてください。
三重進学ゼミでは生徒とのLINEでのやり取りで「5W1H思考」をすすめています。
5W1Hとは、When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が・を)、What(何が・を)、Why(なぜ)、How(どのように)のこと。
課題をやった。やっていない。のような簡単なやりとりでも誰に向けて話しているのか、話の目的は何か、どのような理由からそう考えるのかなど、自分の思考や感情に対していくつも質問をしております。
思考や感情を分解して再確認すれば、相手へより伝わりやすい文章を作ることができるようになるはずです。
普段から、本や新聞などから言葉をインプットし、まとまった時間があるときに5W1Hを使って自分の思考や感情を整理したあと、整理できた内容を周囲の人にアウトプットしてみてはいかがでしょうか。
言語化能力の向上がきっと実感できますよ。
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「言語化」の能力は、身につけるのが難しく思えるかもしれません。
しかし、練習の素材はみなさんの周りにあふれています。
普段なにげなく考えたり感じたりしていることを言語化して、視座を高めてみませんか?

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