2020年6月9日火曜日

本当の「頭のよさ」は学力だけではない。思考力と非認知能力


世間ではよく、優秀な人に対してひとくくりに「頭がいい」と言います。

頭の良さとは一般的に『テストの点数がいい』『偏差値が高い学校に通っている』といった、目に見えるかたちで表されることが多いのではないでしょうか。

しかし、本当の意味で『頭がいい』とは、学校の成績だけでは判断できないものなのです。

今回は専門家の見解をもとに、“頭がいい子ってどんな子?”というテーマでお送りします。

知能が高くても“頭がいい”とは限らない!?

世間で多くの人が考える『頭の良さ』は、勉強ができる=テストの点数が高い=良い学校に通っている、というイメージに集約されがちです。

ですが近頃は、少し違った視点で『頭がいい子』『賢い子』を見極めている専門家や教育関係者も増えてきています。

脳科学者の西剛志先生もそのひとりです。

西先生は、“ただ知能が高い”ことを『頭がいい』としてもてはやすことに疑問を呈しています。

その理由として、次のことが挙げられます。

小さいうちからもてはやされ続けることで、『本人が努力することを怠ってしまう』というのです。

先々のことを予測しすぎて、リスクをともなうチャレンジをしないいわゆる『安定志向』になってしまう。

相手が考えていることが聞く前からわかってしまったり、自分の考えを伝えても理解してもらえないだろう、などと考えたりすることで、人とコミュニケーションを取らなくなる。

いくら学校の成績が良いからといって、それだけで子どもの将来が明るくなるわけではないのです。

むしろ、知能の高さだけを誇っていても、その他の能力を伸ばす努力をしなければ意味がありません。

東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授は、『単に成績が良い子というのは、必ずどこかで限界がくる』と述べています。

そういった子は、ある程度まで伸びても、そこから先は伸びにくくなる傾向があるそう。

『知りたい』『学びたい』という気持ちがともなっていないため、試験が終わったとたんに無気力になってしまうこともあるといいます。

このように、知能の高さだけで『頭がいい』と判断することは、何よりも子ども自身を苦しめることにもつながるのです。

では、本当の意味で『頭がいい子』『賢い子』とは、いったいどのような子なのでしょうか?



『専門家に聞く! 頭がいい子・賢い子ってどんな子?』

『頭がいい子・賢い子ってどんな子?』という疑問に対して、脳科学者や心理学者、教育のプロである専門家の見解をご紹介します。


■知的好奇心が旺盛である

前出の瀧靖之教授は、『賢い子とは?』との問いに、『自分から『知りたい』と思える知的好奇心が旺盛な子どもです』と答えています。

瀧教授によると、企業のトップや仕事ができる優秀な人は、たいてい好奇心旺盛で多趣味という共通点があるそう。

反対に、何事にも無関心な人は、たとえ学力が高くて地位のある役職についていても、自分で考えたり創造したりする力に欠けていることがわかっています。

瀧教授は、「好きなことに一生懸命取り組んだ子は、自分で自分の力を伸ばしていくことができる」と断言します。

つまり、興味があることに対して努力とも思わず夢中になることができる子は、たとえ学校の成績に反映されなくても、いずれ必ず大きく成長できるのです。


■物事を論理的に考えることができる

文教大学教育学部教授で小児科専門医の成田奈緒子先生は、「親はつい学校の成績だけで頭の良し悪しを判断しがちですが、日々の生活の中で前頭葉が活性化されているかなど、脳の成長を確認することが大事です」と指摘しています。

ある論文では、本当の頭の良さを「前頭葉をうまく使って、もっている知識を統合したり、何通りもの場合を考えたりして、漏れのない推論をつくり上げる論理的思考力」と定義していることから、成田先生は『論理的思考力』こそが真の頭の良さにつながっているといいます。

同様に『論理的思考力』の重要性を説くのは、東進ハイスクールの現代文講師として活躍し、論理的な国語術に関する著書を多く執筆している出口汪先生。

出口先生は「現代は世界中のありとあらゆる情報から、自分が本当に必要なものを選び、その真偽を確かめ、将来起こる事態を予想し、その対処法を考える力が求められる」ことから、論理的に考える力が必要不可欠だと断言しています。


■自分で課題を見つける粘り強さがある

マニュアル重視の時代から、急速に「創造の時代」へと変貌を遂げた現代社会。

「これからは自分で課題を見つけて、独自の解決策を編み出さないといけない」と強く主張するのは、『東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方』(PHP研究所)の著者・上田正仁先生です。

自分で課題を見つけるには、ひとつのことをじっくり考える力が必要。

つまり、粘り強く考えることができる子が、これからの「賢い子」だといえるでしょう。

ほとんどの人は、人から与えられた課題をこなすことに終始します。

それは、課題をもらうほうがラクだと考えているから。

子どもたちの中にもそういうタイプは多く、上田先生いわく「自分で考えない回路」ができてしまっているそうです。

「考える回路」を強くするには、知的に興奮する経験が欠かせません。

そのためにも、たくさんの挑戦と失敗を繰り返して、自分で課題を発見できるようになりましょう。


■物事を多面的にとらえる柔らかい思考をもっている

心理学博士の榎本博明先生は、「本当の頭のよさって?」と聞かれて、「自分なりに思考し、物事を様々な角度からとらえることができ、認知能力、非認知能力ともに高いことです」と答えています。

榎本先生によると、IQに代表される認知能力を高めるためには、『認知的複雑性』を高めることが大事だそう。

認知的複雑性の低い子は、矛盾した情報を前にして混乱したり、考え方の違う相手に反発したりと、ものの見方が単純です。

一方、認知的複雑性の高い子は、物事を多面的にとらえられるので、総合的な判断ができ、考え方の違う相手のことも理解できます。

さらに、EQと呼ばれる非認知能力の高さも求められるとのこと。

非認知能力とは、粘る力や自分の感情をコントロールする力、また人の気持ちや立場に対する共感性などを指し、この能力は勉強ではなく遊びや人間関係を通して身につくといわれています。


■生きるために必要な力がしっかりと身についている

脳科学者の茂木健一郎先生は、学力よりも大切なのは『地頭力』だと述べています。

茂木先生いわく、地頭力とは「なにかに挑戦したり、問題を解決したり、変化に対応したりという、いわば生きるために必要な力」だそう。

私たちを取り巻く環境など、変化の激しい時代だからこそ、新しいことにチャレンジしたり、柔軟な発想で変化に対応する力が求められるというわけです。

また茂木先生は、「地頭力を育てずして学力だけを育てようとするのは、かなりリスクの高い戦略だということは、さまざまなデータでも明らかになっている」とも述べています。

地頭力を身につけるには、早いに越したことはないのです。

地頭力は、好きなものをとことん突き詰める場を与えたり、探求学習をさせたりと、日常生活でも充分鍛えることができるので、ぜひ取り入れていきたいですね。

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